内科・消化器内科・外科
柳川ビルクリニック
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炎症性腸疾患

潰瘍性大腸炎

潰瘍性大腸炎はどんな疾患?

大腸の内側を被う粘膜に炎症を起こし、潰瘍を生じる原因不明の疾患です。日本では患者さんの数が増加し、アメリカに次いで世界で2番目に患者さんが多い国になりました。従来は20代を中心とした若年で症状が出現する場合が多いとされてきましたが、幼少期に発症する方や70歳過ぎて発症する方もいます。粘膜に傷(びらん、潰瘍)が生じるため、出血し、下痢、水様便が出現し、腹痛、トイレに駆け込む(便意切迫)、発熱、体重減少、全身倦怠感などの症状があります。もっとも特徴的なのは慢性的な下痢、排便時の出血ですが、自覚症状がなく検診の便潜血反応が陽性で内視鏡検査を行って初めて診断される方もいます。また、10代より若い時期に発症すると、排便習慣を他人と比較することがないため、ずっと下痢が続いていてもそれが正常だと考えて医療機関への受診が遅れる場合もあります。反対に70歳過ぎて潰瘍性大腸炎を発症することは少ないため、出血が続いても痔や虚血性腸炎などの他の疾患と診断されてしまう場合もあります。


潰瘍性大腸炎を診断するには

潰瘍性大腸炎の診断は何か1つの検査で確定できるわけではなく、“診断基準“に照らし合わせて、基準にあった場合に潰瘍性大腸炎と診断されます。このため、診断を確定するためには、血液検査、検便(感染がないか)、内視鏡検査、内視鏡中に採取(生検)した組織の顕微鏡による検査(病理組織検査)などいくつかの検査が必要です。一番重要なのは大腸の粘膜に起きている変化をみることですので、大腸内視鏡検査は診断する際や疾患の経過をみる際に必要です。

潰瘍性大腸炎の経過と治療の考え方

潰瘍性大腸炎は寛解(炎症が収まっている状態)と再燃(炎症が活性化し、びらんや潰瘍があり、症状がある状態)を繰り返すのが特徴です。ずっと寛解を保っていても、突然に再燃する場合もあります。潰瘍性大腸炎ではまだ疾患を完全に治しきる治療法はありませんが、近年、多くの薬剤が登場し、これらを組み合わせて行うことで、より長い寛解状態を保つことができるようになってきています。一方で、薬剤はすべての患者さんに同じように効果があるわけではなく、副作用もあるため、それぞれの患者さんの状態に合わせた治療を的確に選択することが重要です。また、治療をしていても突然に悪化して入院が必要になる場合もあるため、効果のある治療を継続する必要があります。

著しく進歩した治療法のおかげで、炎症の悪化を抑えられる事が多くなり、治療法もライフスタイルに合わせて選択できるようになっています。炎症が収まっている時期には暴飲暴食をしなければ食事制限はなく、必要最小限の注意のみで就労や就学を含めた日常生活が可能です。

潰瘍性大腸炎の発症後、長く経過したときの注意

潰瘍性大腸炎では慢性的に続く大腸粘膜の炎症を原因としてがんが発生することがあります。一般的な大腸がんと比べ、症状がわかりにくく(もともと出血、下痢、腹痛などがある)、内視鏡検査でも粘膜の変化がわかりにくい(もともと、炎症のため正常な粘膜ではない)ため、診断が難しい場合が多いとされています。診断には大腸内視鏡を行って、疑いのある病変があった場合には大腸の組織の一部を採取して(生検)、顕微鏡の検査(病理組織検査)を行う必要があります。

このため炎症の範囲が広い患者さんでは、潰瘍性大腸炎の症状が出てから8年以上経過した時期からは症状が落ち着いていても、大腸内視鏡を定期的に受けることが重要になります。


クローン病

クローン病はどんな疾患?

消化管に炎症を起こす可能性潰瘍を生じる原因不明の疾患です。口から、食道、胃、小腸、大腸、肛門までのすべての消化管に病変が生じる可能性があります。消化管の内側を被う粘膜から、より深い層まで壁全層に炎症が及ぶため、壁の傷(潰瘍)が深いのが特徴です。また、病変はたとえば小腸の一部、大腸の一部など部分的に発生するようにとびとびに(スキップ)して生じることがあります。肛門の周りに膿のたまり(膿瘍)や膿が出る穴(痔ろう)などの病変を生じる場合もあります。


症状と経過

腹痛、下痢、発熱、体重減少が多く、そのほか、肛門の痛み、貧血、倦怠感などがあます。クローン病は症状が落ち着いている寛解期と炎症が強まる「活動期」をくり返します。クローン病の潰瘍(腸管の傷)は深いため、慢性的に繰り返すと腸管の内腔(通り道)が狭くなる狭窄や腸管に穴があいて、膿のたまり(膿瘍)を形成するなどの合併症をきたすことがあります。前者では食後におなかが張る、痛みがある、食欲が低下するなどの症状があり、後者では腹痛、発熱、おなかが腫れるなどの症状があります。


どのように診断するのか

クローン病は何か1つの検査で確定診断できるわけではありません。症状から疑って、内視鏡検査、X線造影検査などで腸管の状態を観察し、腸管の組織の一部を採取して(生検)、顕微鏡の検査(病理組織検査)を行います。そのほかに類似の腸管疾患を否定するために、血液検査、便の培養検査などが必要です。


現在の状態をどう評価する

症状、血液検査、内視鏡検査、便検査などで行います。発熱、腹痛などが強い際にはCTやMRIといった検査が必要になります。
これらの検査を総合して、判断します。


治療はどうする

まだ原因がわかっていないので、疾患を完全に治しきる治療法はありません。以前は治療薬が少なく食事をほとんどとらずに、栄養剤を腸管に直接注入する経腸栄養療法や点滴で必要な水分栄養をとる経静脈栄養療法からなる栄養療法が主流でした。近年では内科治療が進歩し、内服薬や注射薬などで良い状態を長くが持てる方が増えています。また、内服薬や在宅での自己注射薬で治療できる場合もあり、以前より通院で治療ができる方も増えています。特にかつては経過中に狭窄や膿瘍形成などで手術が必要になる方が発症後10年で60%を超えていましたが、現在ではかなり減少してきています。クローン病の病状は個人個人でかなり違い、年齢や社会的な状況も異なるため、それぞれの患者さんの状態にあった治療の目標とそれに向けて、治療法を相談しながら選んでゆきます。


治療は継続が必要

完全に治りきる治療はないため、治療は継続します。もちろん効果があるかと副作用がないかは重要な点です。
また、一般に効果があるとされる治療の効果も患者さんごとで違うため、治療の目標が達成できるかを中心にその後の治療を選んでゆきます。このため、定期的に通院して状態を評価して適切な治療を続けてゆきます。